すべてが始まる夜に
お待たせいたしました──と店員さんが私たちの注文したメニューを運んできてくれた。

急いでメモしていたノートを鞄の中に片付けると、テーブルの上にコーヒーとカフェオレ、そして甘い匂いを漂わせた美味しそうなパンケーキとアップルパイが並べられた。

「部長、見てください。このパンケーキ、まん丸くて可愛いし、焼き色がすごく綺麗! それにこのアップルパイもりんごの量がすごくないですか? 2個のアイスも大きいし」

ほとんどのお客さんがこのパンケーキを注文していたけど、これは納得だ。こんな可愛くて綺麗な焼き色のビジュアルだと絶対食べてみたいと思うだろうし、インスタにも載せたくなってくる。私はスマホを取り出し、パンケーキとアップルパイの写真を撮った。

パンケーキは焼き上がってから時間が経っていないせいか、上に乗せられているバターが熱さでじわじわと溶けだして、パンケーキの中に吸い込まれている。
そしてアップルパイは、横に添えられた2個のアイスが、アップルパイの温かさで少し溶けて流れ出している。

「うわぁー、ほんとに美味しそう! 部長はどっちが食べたいですか?」

「俺はあとでいいよ。俺に遠慮せずしっかり食べろ」

「で、でも……」

「早く食べないと冷めてしまうぞ」

部長はこんな美味しそうなスイーツを目の前にしてもあまり興味がないのか、カップを手に持ち、コーヒーを口に運んでいる。
プリンはあんなに好きなのに、他のスイーツには興味がないのだろうか?

「じゃあすみません。先にいただきます」

私は部長に向けて軽く頭を下げると、パンケーキの上からゆっくりと蜂蜜を落とし、綺麗な焼き色真ん中にナイフを入れた。
切った場所からとろりと蜂蜜が流れ込んでいく。
そしてひとくちサイズにカットしたパンケーキをフォークに刺し、口に入れた。
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