すべてが始まる夜に
「うわぁー、いい香り。今日も素敵なカップでありがとうございます」

蔵田さんに満面の笑みを向けると、蔵田さんは「ごゆっくり」と嬉しそうに微笑み返してくれた。

さっそく淹れたてのコーヒーを口に運ぶ。
苦味と酸味のバランスがちょうどよくて、いつもと変わらない口当たりがすごく美味しいコーヒーだ。

「あー、美味しいー」

しみじみとしながらひとり言を呟いていると、「このコーヒー、本当に旨いな」と部長が感心するように私を見て頷いた。

「ほんと美味しいですよね。会社の帰りにたまにここに来て飲みたくなるんです」

「バランスがすごくいい。香りもコクもあって、後味もすっきりしているし。このブレンドだけじゃなくておすすめのコーヒーも飲みたくなってきた」

部長はかなり気に入ったのかカップを拭いている蔵田さんに声をかけて、コーヒーに関する質問を始めた。
コーヒーに詳しい部長の話に、蔵田さんも楽しそうに会話をしている。部長は大好きなプリンが目の前にあるにも関わらず、蔵田さんが話すコーヒー豆の知識を熱心に聞いていた。

部長、本当にコーヒーが好きなんだ。
こんな姿初めて見た。
プリンより好きなのかな?

2人が仲良くなったことに頬を緩めながら、私は目の前にあるプリンをスプーンで掬った。

久しぶりだけあって、やっぱりここのプリンすごく美味しい!

たまごの濃厚さを感じる硬めの甘いプリンが、カラメルの苦さと合わさって、コーヒーと同じくらいバランスのいいプリンだ。また、上に乗った生クリームは軽くてふわふわで甘さ控えめなので、これも濃厚なプリンとマッチしている。

プリンってこうしてお皿に置いて食べると、山型でフォルムは可愛いし一段と美味しそうに見えるんだよね。
それにこんな風に生クリームやフルーツを添えると、さらに美味しそうに見えて写真撮りたくなるし。
ラルジュのプリンも美味しくて人気なんだけどな。
でもこういう感じじゃなくてプラスチック容器での提供だからな……。
やっぱり美味しそうに見えるって、器や盛り方っていうのもひとつあるよね。

プラスチック容器でも美味しそうに見える方法──。

プリンの上に生クリームとフルーツを乗せてみる?
でもなー。この山型だからデコレーションするとプリンが可愛く見えるんだよね。
プラスチック容器の上に生クリームとフルーツ乗せてみても、そんな変わり映えしないよね……。

うーんと腕を組んで考えていると、「どうした。眉間に皺なんか寄せて」と部長が横から顔を覗き込んできた。
< 206 / 395 >

この作品をシェア

pagetop