すべてが始まる夜に
「うわぁ、すごい! ここが人気のカフェ?」

そこは緑に囲まれたガラス張りの建物で、リゾートに来たと錯覚してしまいそうな別荘のようなカフェだった。

「だろ? テラス席もあって、それがすごく人気なんだって」

「東京じゃないみたいだよね? こんなとこ全然知らなかった……」

ドアを開けると店内はとても広々としていて、ガラス張りということもあり開放感が抜群だ。それにインテリアもスタイリッシュでかっこよく、もう食い入るように目を輝かせて見てしまう。また、いろんなところにお花や観葉植物が置いてあり、カフェの雰囲気も最高にいい。

「どう? 新店舗の参考になりそうか?」

「うんうん。すごくなりそう! 吉村くん、連れてきてくれてありがとう」

もう嬉しくて、吉村くんに満面の笑みを向けてしまう。
店員さんに店内席とテラス席のどちらがいいかを聞かれ、「人気のテラス席が今ならまだご案内できますよ。残り2席です」と言われた私は迷ってしまった。
人気でとても気持ちよさそうなテラス席にすごく惹かれるけれど、でも今日は普通にお茶をするために来たのではなく、新店舗のヒントを得るために来たという目的がある。やっぱり何かヒントを得るには店内の方がいいだろうと考え、店内席でお願いすることにした。

「ほんとにすごいね。朝10時過ぎなのに、もうほぼ満席……。もう少し遅かったらきっと入れなかったよね?」

「そうだな。すごく人気とは聞いていたけど、俺もここまで人気とは思ってなかった」

あまりの人気ぶりに吉村くんも驚いたように店内を見渡している。

「ねぇねぇ、何頼む? カフェメニューの他にもいろいろあるよ。うわぁー、迷ちゃうな……。全部美味しそうなんだけど」

「何でも好きなの頼めよ。一番はパンケーキが人気らしいぞ」

「パンケーキかぁ……。パンケーキいいよね。うわぁ、これ3段重ねでベリーとバナナとフレッシュクリームが上に乗ってるんだって。でもこのアールグレイのシフォンケーキっていうのも捨てがたいんだよね。マスカルポーネのジェラートが添えてあるみたいだし」

メニューを見ながら私が悩んでいると、吉村くんがクスクスと笑い出した。
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