すべてが始まる夜に
「気づいてなかったのか?」

「気づいてないというか、落ち込んじゃうので気にしないようにしてたっていう方が合ってるかな」

「落ち込む? なんで?」

「街中がいろんな光に包まれてキラキラと輝くイルミネーションを見るのはすごく好きなんですけど、ひとりでそんな街並みを見ていると、今年もまたひとりなんだなって実感させられて悲しくなるんですよね。だから落ち込んじゃうというか……」

昔からクリスマスはとても甘くて特別な日のように思っていて、大人になったらいつか私も彼氏と一緒に街が彩られるイルミネーションを見ながらそんな特別な日を過ごしてみたいと夢を描いていた。
だけど、未だに叶えられずにいる。

「じゃあ今年は初めて2人で一緒に過ごせるな」

「えっ?」

「俺たち恋人同士だろ? 茉里は初めて彼氏と一緒にクリスマスを過ごせるというわけだ」

クリスマスに部長と一緒に過ごすってこと?
恋人同士として?
レッスンとはいえ、男の人と過ごすと考えただけで心音がドクンドクンと聞こえ始める。
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