すべてが始まる夜に
おでこを離した部長は、再び私の顔を見つめた。

「茉里、ひとつ質問していい? レッスンが終わって誰かから告白されたとしたら、告白されたやつと付き合ってみようと思っているのか?」

「そんなこと全然考えてなかったから実際にそうなってみないとわからないけど……、できればそうしたいなって思うのかな」

「そっか……」

やっぱりまだなぜか部長は悲しそうだ。

「でも……、やっぱりわからないかな。今は悠くんとのレッスンの方が大事で、迷惑かもしれないけど、今は悠くんと一緒にいたいって思っちゃうの。だからレッスンが終わったあとのことはまだわからない」

迷惑なんかじゃないよ──。
そんな声が聞こえてきて、ふわりと抱きしめられる。
カップルや家族連れが多い場所で人目につくことは十分わかっているけれど、突き返すこともできず、恥ずかしいと思いながら胸に顔を埋めてしまう。
いつもの爽やかな香水の匂いに包まれて、身体がビクンと反応した。

「茉里、そろそろ神社に行こうか?」

身体を離した部長が、私の頭を撫でながら腕時計を確認した。

「あと10分くらいで神社行きのバスが来るはずだ。次はパワースポットの神社だからしっかりお願いしないとな」

私たちは穏やかな波の音を聞きながら、また手を繋いでバス停へと向かった。
< 286 / 395 >

この作品をシェア

pagetop