すべてが始まる夜に
2人だけのChristmas Eve
夕飯は和食の創作料理のコースで、味はもちろんのこと、目でも楽しめるとても美味しい料理だった。
テーブルのグラスキャンドルがゆらゆらと揺れる中、部長と一緒に窓から見える夜景と海を眺め、何度も見つめ合って、微笑みあって。
好きな人と一緒に食べるごはんはこんなにも美味しくて幸せなんだということを改めて実感した。

今日はクリスマスイブということで洋楽のクリスマスソングがBGMとして心地よく流れ、料理のところどころにもクリスマスということがわかる仕掛けが隠されていてとても楽しい時間だった。


「悠くん、コーヒー淹れよっか」

食事を終えて部屋に戻ってきた私は、ソファーテーブルの上にケーキを置くと、部長に声をかけた。

「そうだな。コーヒー淹れてケーキ食べよっか」

さっきの夕飯でデザートまでしっかり食べたのだけれど、今日はクリスマスの特別企画としてお部屋ごとにケーキがプレゼントされ、夕飯が終わって部屋に戻るとき、スタッフの人が手渡してくれた。

コーヒーを淹れて、お皿にケーキを出し、テーブルの上に並べる。
そして私は自分のスーツケースの中から、部長に持ってきたクリスマスプレゼントを取り出した。

「悠くん、これクリスマスプレゼントなんだけど、受け取ってもらえるかな?」

「おっ、俺に?」

部長が目を丸くして私を見る。

「うん。ほんとはね、レッスンのお礼としてのクリスマスプレゼントだったの。私、悠くんに教えてもらうばかりで何にもお返しができてなかったから……」

「茉里、開けてもいい?」

口元を緩めて頷くと、部長はさっそくリボンを解き、箱を開け始めた。

「あっ、ネクタイだ……。お洒落なネクタイだな。茉里、これ高かっただろ?」

「悠くんに似合いそうなネクタイを探していたら、これ以外気に入るのがなくて……。いつもしているネイビーのネクタイとかボルドーのネクタイも好きなんだけど、この淡いピンクのネクタイも絶対悠くんに似合いそうだから。もしかして……ピンクは嫌?」

「そんなことない。自分じゃ買わない色だから正直驚いてるけど、茉里が俺に似合うって思って選んでくれたネクタイだろ? 嫌なわけないよ。ほんとにありがとな。すごく嬉しい。さっそく月曜日にして行ってもいいか?」

「ほんと?」

にっこりと笑って抱きしめられる。
部長に喜んでもらえたことが嬉しくてたまらない。
< 302 / 395 >

この作品をシェア

pagetop