すべてが始まる夜に
「ねぇ、葉子。聞いてもいい? 女性がネクタイをプレゼントするのに何か特別な意味でもあるの?」

「もしかして茉里知らないの?」

「うん、知らない」

「茉里は意味も知らずに男性にネクタイをプレゼントしちゃいそうだよね。あのね、ネクタイは首に締めるものでしょ。だから、あなたに首ったけ、あなたのことが大好き、あなたに夢中ですっていう意味が込められているんだって」

「うそっ。そんな意味があるの?」

男性にプレゼントするには定番のアイテムだと思っていたネクタイにそんな意味があったなんて。
私、そんなの知らずに部長にプレゼントしちゃった……。

「そうだよ。彼氏じゃない男性にネクタイをプレゼントするときは、勘違いされちゃうかもしれないから気をつけなきゃだめだからね。でも茉里も彼氏ができたんだから、今度彼氏の誕生日にネクタイをプレゼントしてみたら? きっと喜んでくれるはずだよ」

今回はそんな意味も知らずにプレゼントしちゃったけど、次にプレゼントするときは、大好きっていう意味も込めて部長にプレゼントしたいな……。

そんなことを考えていると、葉子が何か言いたそうな、じとっとした目を向けてきた。

「茉里、あんた今彼氏のこと考えてたでしょ。もう幸せそうな顔しちゃって。松永部長の話聞いても全然ショックも受けてないし、全く気にしてないもんね。私と若菜ちゃんはこんなにショックを受けているというのに……」

「だ、だって……」

自分が彼女だとも言えないし、かと言って自分もショックを受けてるなんて嘘をつくこともできず、口籠ってしまう。
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