すべてが始まる夜に
「また松永部長が経理部に来たら、彼女かどうか聞いてみよっかな」

「葉子さん、聞いたらまた教えてください」

「もちろん教えるよ。それよりそろそろお開きかな。人が少しずつ少なくなってる」

周りを見ると、さっきまで人でいっぱいだったのに空間ができ始め、少しずつ人が少なくなってきている。

「自由解散だから私たちもそろそろ二次会行く?」

「そうですね、行きましょうか」

葉子と若菜ちゃんが手に持っていたグラスをテーブルの上に置いたところで、吉村くんが「俺も一緒に行ってもいいか?」と尋ねてきた。

「じゃあ、下に降りて二次会の場所決めよっか」

葉子が先導して、みんな一緒にエレベーターで降りる。
私はさっきの部長の話が気になって、二次会に行く元気もなくなっていた。

会社を出たところで、「どこにする?」と葉子がスマホでお店を検索し始めた。

帰りたいけど帰りたいとも言えず、かと言ってこんな気持ちで部長の部屋に戻ったところで、どんな顔をしていいのかもわからない。
せっかくこんなにも好きになれた人と出逢えたのに、もしかしたら部長とは別れなきゃいけなくなるのではないかと、最悪なことばかり想像してしまう。

「ここから近いしこの店にしない?」

葉子がスマホの画面を見せてくれたところで、部長と水島部長が一緒に会社から出てきた。
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