すべてが始まる夜に
悠樹side #5
またしても気持ちが抑えきれず、新年会が終わって帰ってきてから3回も茉里を抱いてしまった。
しかも今回は短時間で3回だ。

「俺、どれだけ性欲が強いんだよ……。茉里に人を猿みたいにいうなって言ったけど、これじゃあほんとに猿だよな」

ソファーと風呂とベッドの上と3回も俺に抱かれ、疲れ切って熟睡している茉里の寝顔を見ていると幸せな気持ちに包まれてくる。愛しさを実感するひとときだ。

それにしても今日、いや、日付が変わったから昨日だが、麗香が会社に訪ねてくるとは夢にも思っていなかった。

受付から俺を訪ねてアポなしの客が来ているという内線を受けて下に降りると、麗香と一緒にマネージャーらしき男が立っていて、俺の顔を見た途端、麗香が嬉しそうな表情を浮かべた。

何度も連絡してきていた麗香の電話を俺が無視し続けていたからだろう。マネージャーを連れて、仕事の挨拶という口実で会社に訪ねてきたのだ。

ラルジュの新店舗が福岡で3月に開店するということはまだ公表はされていないが、業界繫がりで聞いたのか、1店舗目、2店舗目と同じく、3店舗目のオープニングイベントも麗香を使ってもらえないかという話だった。

俺は、今回は別の方法でPRすることが決まっていること、またこれからは、会社の方針として別の方法でPRをしていくことが決まったことを告げ、申し訳ないがこんな風にアポイントも無しに会社に訪ねてこられても困る、協力できることは何もないときっぱりと断った。

途中、なぜかマネージャーが急用の電話だと言って席を外したときに、麗香が待っていたかのように俺に作り慣れた笑顔を向けてきた。
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