すべてが始まる夜に
「なんかさ、あの日偶然出逢うまでは茉里とこんな風になるなんて思わなかったけど、こうしてこの文字を見てると、俺たち、こうなるのは必然だったのかもしれないな」
「私ね、悠くんと出逢えて本当によかったと思ってる。上司として尊敬していたのが、先生として尊敬するようになって、そしてそれが好きに変わって……。悠くんがひとつひとつゆっくりと私に教えてくれたから、経験がなくて不安で怖いと思っていたことが、何も怖くなかった。悠くん、ありがとう」
「茉里……」
「あっ、そうだ。私も悠くんに渡したいものがあるの」
私は鞄の中からネクタイを取り出した。
「またネクタイで申し訳ないんだけど、いつもピンクのネクタイばかりしてるから、もうひとつ買ったの。気に入ってくれるといいな」
「開けてもいいか?」
部長がうれしそうな顔をして包みを開けて、ネクタイを取り出した。
「おっ、これはまたかっこいいネクタイだな。俺、好きだよ、このネクタイ」
「ほんと?」
「ああ、すごく気に入った。さっそく月曜日にしていこう。楽しみだな」
そう言って部長が私を抱きしめる。
「茉里、お前を幸せにするから、俺を信じてついてきてほしい」
「私はいつでも悠くんのそばにいるよ。どんなことがあっても一緒にいる。悠くんのことが大好きだから」
「俺も、茉里を愛してる」
私たちはあの日、偶然出逢ったあの夜からすべてが始まったけれど、今日からまた新しいすべてが始まる。
こうして新しいことが始まるごとに、いいことばかりじゃないかもしれないけれど、ひとつひとつ思い出が増えて愛情が重なっていくはずだ。
そして私はそのたびに、悠くんのことをもっともっと好きになっていくのだろう。
きっと、一生、永遠に──。
Fin
「私ね、悠くんと出逢えて本当によかったと思ってる。上司として尊敬していたのが、先生として尊敬するようになって、そしてそれが好きに変わって……。悠くんがひとつひとつゆっくりと私に教えてくれたから、経験がなくて不安で怖いと思っていたことが、何も怖くなかった。悠くん、ありがとう」
「茉里……」
「あっ、そうだ。私も悠くんに渡したいものがあるの」
私は鞄の中からネクタイを取り出した。
「またネクタイで申し訳ないんだけど、いつもピンクのネクタイばかりしてるから、もうひとつ買ったの。気に入ってくれるといいな」
「開けてもいいか?」
部長がうれしそうな顔をして包みを開けて、ネクタイを取り出した。
「おっ、これはまたかっこいいネクタイだな。俺、好きだよ、このネクタイ」
「ほんと?」
「ああ、すごく気に入った。さっそく月曜日にしていこう。楽しみだな」
そう言って部長が私を抱きしめる。
「茉里、お前を幸せにするから、俺を信じてついてきてほしい」
「私はいつでも悠くんのそばにいるよ。どんなことがあっても一緒にいる。悠くんのことが大好きだから」
「俺も、茉里を愛してる」
私たちはあの日、偶然出逢ったあの夜からすべてが始まったけれど、今日からまた新しいすべてが始まる。
こうして新しいことが始まるごとに、いいことばかりじゃないかもしれないけれど、ひとつひとつ思い出が増えて愛情が重なっていくはずだ。
そして私はそのたびに、悠くんのことをもっともっと好きになっていくのだろう。
きっと、一生、永遠に──。
Fin