すべてが始まる夜に
「茉里、未来のことはわからないし、ここであれこれ言葉を並べてかっこつけたことを言っても嘘に聞こえてしまいそうだから、今、2つだけ約束させてくれないか?」

「約束?」

「ああ。茉里を一生幸せにする、そして絶対に浮気はしない、その2つだけは必ず約束する。だから……俺と結婚してくれないか?」

部長は手に持っていた小さな箱とメッセージカードを私に差し出した。

「開けてもいいの?」

「いいよ」

にこりと柔らかく微笑む部長に見つめられながらリボンを解いて箱を開けていく。
すると、細いリングに大きなダイヤモンドがキラキラと輝くエレガントな指輪が現れた。

こんなに幸せな気持ちにさせてもらっていいのだろうか。うれしくて、幸せで涙がどんどん溢れてくる。

部長の顔を見ると、「茉里の薬指に着けさせてもらってもいいか?」と尋ねられ、私は涙を流しながら頷いた。

部長が左手の薬指にそっと指輪をはめてくれる。

「よかった。サイズがぴったりだ。茉里の指によく似合ってる」

そして、メッセージカードを開くと、『Will you marry me?』と書かれていた。

「メッセージカードってどうかと思ったんだけど、俺たちの名前が入ってるから一緒につけてもらったんだ」

「名前?」

「そう、名前。プロポーズの言葉に俺たちの名前が入ってるってすごくないか?」

そう言って部長が、“you” と “marry” の文字を指さした。
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