すべてが始まる夜に
部長、大丈夫かな?

エレベーターが10階から下へと降りていく中、かなり辛そうな表情をしていた部長のことが気になり、他に何か自分にできることはないかと考えてしまう。

探せばあるって言ってたけど、ほんとにお家に薬あったのかな?
っていうかちゃんと探して薬を飲むのかな?
かなり怠そうにふらついていたもんね。
あんな状態で薬探せるのかな?
でも大人だし……。
私がそこまで気にしなくても大丈夫……、だよね。
そうは言ってもあの状態でひとりっていうのは心配だし……。
ほんとに大丈夫かな?

3階に到着して自分の部屋に入り、すぐに鞄と買い物袋を置いて薬を探し始める。
そして解熱剤と冷凍庫の中からジェル状の冷却枕を取り出し、それをローテーブルの上に置いた。
2つをじっと見つめながら考える。

これを部長の部屋まで届けてもいいかな?
余計なことしなくていいって言われるかな?
でももし薬がなかったら辛いままだよね?
どうしよう……。

心配なので薬くらいは持って行きたいけれど、わざわざ部屋まで持って行くのは部長にとって迷惑かもしれないと思うと躊躇してしまう。

体調が悪いんだから余計なお世話だとしても、このくらいは許してくれるよね。部長のあんな体調の悪そうな姿を見て、同じマンションに住んでるのにやっぱり無視なんかできないもん。
薬なんてあって困るものじゃないし、もしいらないって言われたら持って帰ればいいだけじゃん。

そう自分に納得させるように頷くと、私は解熱剤と冷却枕とタオルを持って部長の部屋へと向かった。
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