暴君王子の恋の瞳に、私は映らない



しゃがみ込んだまま

頑として、顔を上げない鞭光君。



どんな声を掛けたらいいのか

全くわからない私。





2人の間に、無言の時間が流れて。

流れて、流れて。



お線香が消えそうなほどの、荒っぽい風が

いたずらに、私の髪を舞い上げたと同時



前髪をかき上げる鞭光君が、私を見上げた。




心の痛みを我慢しているような、苦しく揺れる瞳。



なんでそんなに、痛々しい表情をするかなぁ?



私の心まで、なぜか

ぎゅーっと、締め付けられちゃうよ。



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