あなたの隣を独り占めしたい(続編まで完結)
 日が落ちたのもあり、車の中は昼とは違って少しひんやりしていた。
 暑いと思っていた夏もすっかり終わり、もうすでに冬の気配さえ近づいているのだと感じる。

「もうすぐ冬だな」
「そうですね」
(同じことを思ってたんだ)

 走り出した車の中で、私は昼とは違うドキドキを感じていた。
 肌寒さも暖房を効かせてくれたのと同時に別の意味でも薄らいでいく。

(ああ、このまま流されたら夜も一緒に過ごしてしまいそう)

 佐伯さんの助言通り、私は本当に見る目がなかったらしい。
 デートっていうのが、男性を喜ばせるためにあるものじゃないっていうのが今日だけで十分に分かったし、別れ際にはこんなにも切ない気持ちになるのだというのも分かった。
 圭吾は一緒にいる時は自分の話ばかりだったし、色々気を遣ってしまって、別れの際には正直ほっとしている時が多かったのを思い出す。

 元カレと比べて佐伯さんを好きになるっていうのは、なんだかあまり綺麗じゃない感じもするけれど、弱っている時に優しくされたら惹かれるのは自然なことなんじゃないだろうか。

(優しい人で、楽しい思いばかりって感じてたのはなんだったんだろう)

「元カレのことでも思い出してる?」

 ずばり言い当てられ、驚いて運転席の方を見る。

「佐伯さんってエスパーですか」
「ははっ、図星かあ。前も言ったでしょ、俺は人の表情で洞察するのが得意なんだって」
「にしても、正確に洞察しすぎですよ」
「お褒めの言葉ありがとう」

 冗談めかしてそう言った後、やや真剣な表情をする。

「で……俺と比べて、何か変化あった?」
「はい。佐伯さんとのデートは楽しくて……新鮮でした」
「どういう部分で?」
「色々ですけど。圭吾は基本外でのデートってあまりしない人だったので、それだけでもかなり新鮮でしたよ」
「外に行かないで、何するの」
「それは……」

 口に出すのははばかられることだった。
 圭吾は私とずっと一緒にいたいと言い、大抵はどちらかの家で抱き合うことが多かった。そうでない日もホテルを予約して、そこでずっと過ごしているというパターンばかり。

(愛し合ってると思ってたけど、あれは単に体の関係だけだったってことなのかな)

 それなのに、体に飽きられて振られるとか……最悪すぎて笑うしかない。
 佐伯さんはやっぱり私の心を察したのか、ふうと一息ついた。
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