極上御曹司は懐妊秘書を娶りたい
 可愛い、好きだ、愛している。
 言いたいことはいくらでもあるのに、唇からは気の利いた言葉の一つも出てこない。彼女への想いは熱と欲望に邪魔をされ、喉の辺りにわだかまってしまう。
 こんなにも愛おしいのに、言葉にできない。その苦しさが俺を一層駆り立て、彼女の身体へと手を伸ばさせる。理性という名のブレーキは、アルコールに溶けて消えてしまったかのようだった。
「……もう、黙れ」
 そして、まだ事態が上手く飲み込めていないのか喋り続ける麻田の唇を、キスで塞いでしまえば、――――あとはもう、二人分の熱が溶け合うまで止まらない。
 初めて味わう惚れた女の唇や舌は、ひどく甘く、喉の渇きを潤していく。触れても触れても足りなくて、俺は彼女の柔らかな身体を捕まえて貪るように口付けを深くした。
「ン……、っもう少し、口を開けてくれ」
「っや、なに……っあ、ぅ、んん……っ」
 可愛らしい抵抗を押さえ込み、心ゆくまで彼女の唇を愛した俺は、そのまま首筋へとキスを続けた。俺が触れるたび、その肢体が揺らめいて甘い芳香がベッドの上に広がる。先ほど微かに感じた香りは俺をさらに酩酊させて、理性や自我を深い深い底へ落としていく。
「っ、だめ……しゃちょ、ほんとに……」
「だめじゃない。……ようやく、」
 君を手に入れることができる。
 呟いた言葉に反応はなく、ただ麻田はか細く甘ったるい吐息を零しながら、俺の首へと腕を回したのだった。
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