【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】
 ◇◇◇◇◇

 私と瑞生さんの部屋は別々で、瑞生さんは今から仕事らしい。
 プライベートな時間は、本当に少ないのだと実感した。
 ブルーライトカットの眼鏡をかけたレアな姿で、ルームウェアなのにだらしなく見えない。
 白いTシャツの上に、セットアップの紺色のシャツを羽織り、同色のボトムス。
 パソコンを前にして、リビングのテーブルで難しい顔をしているけれど、つい魅入ってしまう。
 
「おやすみ」

 私の視線に気づいた瑞生さんが微笑む。

「お、おやすみなさい……」

 声が上ずってしまったかもしれない。
 恥ずかしくて、慌てて自分の部屋へ入った。
 ふかふかのベッドに横になってみたけれど、高級感がありすぎて落ち着かない。

 ――違う。落ち着かないのは、瑞生さんが近い場所にいるから。

 これは夢で、一度眠ってしまったら、二度とこんな素敵な夢を見れないかも。
 そう思うと、よけい眠れなかった。

「ちょっと落ち着くのに、水でも飲もう……」

 起きて部屋を出て、リビングを通る。
 リビングには瑞生さんがいて、ソファーで眠ってしまっていた。
 久しぶりの寝顔に笑みがこぼれた。

「瑞生さん? 風邪をひきますよ?」

 瑞生さんの顔を覗き込み、そっと髪を撫でる。
 人を圧倒するオーラを持っているのに、眠っている時は可愛らしくて無害に見える。
 それが不思議だった。
 桜の木の下で見た寝顔。
 すべて、あの時から、始まっていたのかもしれない。
 生まれて初めて、私は恋をした――

「寝込みを襲うなよ」

 私の指を捕まえ、瑞生さんが笑った。
< 152 / 216 >

この作品をシェア

pagetop