【コミカライズ】若き社長は婚約者の姉を溺愛する《宮ノ入シリーズ①》【番外編更新】
「タヌキ寝入りですか?」
「眠ってた。でも、気配で気づいた」
「目を閉じていても、美桜は気配でわかる」
 
 私たちの間に流れる空気は、いつも静かで穏やかだった。
 でも、今は少し違っていた。
 私の指に自分の指を絡め、瑞生さんが視線を落とす。

「美桜の指は細いな」
「瑞生さんの手は大きいですね」

 黙って目を閉じ、お互いの気配を追う。
 重なる唇と肌に触れる髪の感触に、瑞生さんの存在がここだと教えてくれる。

「美桜」
「はい」
「怖い思いをさせて悪かった」

 私を抱きしめ、髪に顔を埋める。
 怖い思いをしたのは、私だけではない気がした。
 弱みを他人に悟られないよう教育されてきた瑞生さんは、私の前だけは素直で、無邪気で、人間らしい熱を感じる。

「瑞生さん。助けてくれてありがとうございます。今まで、誰もあの家から、私を助けることはできませんでした」

 なにもかも諦めて生きてきた私を強い力でさらえたのは、あなただけ。
 あげられるものは、なにもないと思っていた。
 でも、ひとつだけある。

『自分を差し出せばいい』

 八木沢さんの声が聞こえたような気がした。
 瑞生さんの不安を消すために、私からキスをする。
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