怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
この結婚はお互いのメリットによるもので、私たちは世間一般の夫婦とは違う。それでもあの日、悠正さんが私に結婚を提案してくれたときに言っていたように、こういう結婚もアリなのだと思う。
「……結婚してよかった」
輝く夜景を見つめながらふとそんな言葉が口からこぼれた。
ほとんど独り言のような呟きだったのに、どうやら隣にいる悠正さんの耳には届いていたらしく、彼の視線が私に向くのがわかった。
「俺も優月と結婚できてよかったよ」
その言葉に私は思わず安堵する。
この結婚はお互いのメリットのためのものなので、私ばかり得をしていても意味がないのだ。
「悠正さんもそう思ってくれているならよかったです。所長の治療もこのまま順調に進んで、早く退院できて元気になるといいですね」
そう言いながらふと気が付いてしまった。
所長の病気が快復したら、悠正さんはもう私と結婚する理由がなくなるのでは?
彼が私に結婚の提案をしたのは、父親に安心して病気の治療を受けてもらうため。だから、快復したら私との結婚は悠正さんにとってはなんのメリットもなくなってしまう。