怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
『今回の件で、小野坂さんにお礼がしたいんだけど』
『お礼ですか?』
いったいなんのお礼だろうと優月が不思議そうに首をかしげる。
『俺が事務所に戻るまであの女性のそばにいてくれたことで、そのあとの相談がスムーズに進んだから、そのお礼』
『いえ、私はそんなに大したことはしていないので』
『でも俺はすごく助かった。だからお礼として食事に誘いたいんだけど、さっそく今晩どうかな』
そう誘ってみたものの、目の前の優月の反応がだいぶ鈍い。俺の食事の誘いに対して、明らかに困惑している様子がはっきりと伝わってきた。そこで俺は言葉を変えてみることにする。
『それじゃあ、お礼というのはなしにして普通に俺と食事に行かない?』
『えっ。……私が、隠岐先生とですか?』
すると、優月はさらに困惑した表情になってしまった。
どうやら彼女は俺に食事に誘われているこの状況が不思議でたまらないらしい。きょとんとした顔を浮かべ、理解に苦しんでいるようだ。
『せっかくのお誘いですが、すみません』
しばらくすると、きっぱりと断りの言葉を返されてしまった。