怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 私はソファからすっと腰を上げた。

 携帯端末を手に取り自室に向かうとバッグの中にそれを放り込む。素早く着替えを済ませてから、マンションを飛び出した。

 悠正さんのところへ行こう。もちろん彼はまだ仕事だけれど、その帰りを家で待つのではなく自分から会いに行きたいと思った。

 そして、悠正さんの気持ちを確かめたい。

 元恋人との関係が私のただの誤解だとして、悠正さんが本当に私を好きだと思ってくれているのなら。彼に告白をされて動揺して逃げてしまったあの日の返事のやり直しをさせてほしい。


 私は悠正さんのことが好き。


 気が付いたばかりのこの気持ちを彼に伝えたい――。

 はやる気持ちを抑えながら事務所に向かっていると、途中であのカフェの前を通った。悠正さんが元恋人とふたりでいるところを見てしまったあの場所だ。

 そのときの光景を思い出して足早に通り過ぎようとした、そのときだった。

 ふと視界に入ったのはテラス席にいるスーツ姿の悠正さん。その向かいには元恋人の姿もあり、あの日と同じ光景に思わずぴたりと足を止めてしまう。

 朝早くにスーツ姿で出掛けて行ったから悠正さんは今日も仕事なのだと思っていた。でも、違った。やっぱり元恋人と会っていたんだ。

 その事実に胸がズキズキと痛み出す。

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