怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
今さらもう離れるなんて無理だと思った。
危険な目に合わせてしまうかもしれない。それでも俺は優月と一緒にいたい。
こんなに好きになってしまったんだ。彼女のいない生活なんてもう有り得ない。
それに、俺の聞き間違いでなければあのとき優月は薄れる意識の中で俺に向かって『好き』と告げた気がする。
以前、告白をしたときは『ごめんなさい』と断られ逃げられたはずだ。振られたと思っていたが、好きだと言われて動揺した。そのことについてもまだ優月に確認できていない。
怪我をして朦朧とした意識の中での言葉なので、それが果たして優月の本心なのかどうかはわからない。
けれどもしも本当に優月が俺を好きでいてくれるなら、俺はこのまま優月と一緒にいたい――。
そんなことを考えながら、俺は今日も優月のいないマンションへと帰宅する。
いつも通り残業を終えての帰宅なので、時刻はとうに夜の九時を過ぎていた。
玄関の扉を開けると、そこに女性ものの靴を発見する。すぐに優月のものだと気が付いた。でも、なぜ?
彼女はまだあと少し実家にいる予定だ。それなのになぜ戻ってきているのだろう。