怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
不思議に思いつつ明かりのついたリビングに足を踏み入れると、ソファに座っている優月が目に入った。
「悠正さん、おかえりなさい」
「ただいま」
ふんわりとした笑顔の優月に迎えられ、胸がじんわりと熱くなる。
少し前まではこれが当たり前の光景だったのに、一歩間違えば二度と同じ光景は見られずに優月はもうどこにもいなかったかもしれない。
そう思ったら改めて優月が無事でよかったとその体を今すぐに抱き締めたくなった。
「今日は悠正さんにお話があって来ました」
ソファから立ち上がった優月が、近くに置いてあるバッグに手を伸ばした。そこから取り出したのはA3サイズほどの用紙。彼女はそれをダイニングテーブルの上に広げると、リビングの扉の前に立ち尽くしている俺に視線を向ける。
「私のところはもう記入してあります。あとは悠正さんが記入を済ませたらすぐに提出できるので」
「優月、これは……」
そっとダイニングテーブルに近付いた俺の目に飛び込んだのは離婚届だった。
「別れましょう、悠正さん。あなたは自分が本当に好きな人と一緒になるべきです」
「優月、なにを言って――」
「さようなら」