怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~

 電話で彼氏のふりをしてくれただけでも十分にありがたいのに、これ以上隠岐先生を私と母のごたごたに巻き込むわけにはいかない。それに、隠岐先生は私の本当の彼氏ではないのだから。


「さすがにそこまでしていただくのは隠岐先生に申し訳ないです。あとのことは私ひとりでなんとかするので、隠岐先生は一緒に来ていただかなくて大丈夫です」

「本当にひとりで大丈夫?」


 隠岐先生が高い背を屈めて、私の顔を覗き込んでくる。


「あの様子だとお母さんけっこう怒っているぞ。さっきの小野坂さんとお母さんの電話のやり取りを聞いてわかったけど、どうやらきみは母親にあまり強く発言できないみたいだから心配だな。うまく丸め込まれて、したくもないお見合いをさせられることになる気がするけど、それでいいの?」


 うまく丸め込まれる……。

 確かにその通りになりそうで言葉に詰まる。そんな私に隠岐先生がにっこりと優しく笑いかけた。


「心配しなくて大丈夫。そんなに見合いが嫌なら、俺が断るのを手伝ってあげるから」

「手伝うって……」


 どうしてそこまでしてくれるのだろう。

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