怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
「小野坂さんが電話に行ったきり戻ってこないから心配になって来てみたんだ。そうしたらきみの様子がどこかおかしくて、申し訳ないけど立ち聞きさせてもらった。なんだか必死にお見合いを断ろうとしているのがわかったから、味方をしてあげたくなって」
「それで、私の彼氏のふりを?」
「そう。昨日一緒にマンションに泊まったっていう‟彼氏„は俺のことだよな。だから、話を合わせてあげた方がいいのかと思って」
「そ、それは……」
お見合いを断るために彼氏がいるという嘘を思いついたのは、隠岐先生とのことがあったから。どうせ朝帰りするのなら彼氏の家に泊まっていたことにしようと思ったのだ。
でも、隠岐先生に彼氏のふりをしてもらうことになるとは思わなかった。おかげで母は私の嘘をすっかり信じたと思う。
「あの……母は、なんと言っていましたか」
私にはふたりのやり取りがよく聞こえなかったので尋ねると、隠岐先生が教えてくれる。
「今すぐ優月と一緒にうちに来なさい。って、かなり怒っていたな。だからこれから俺も一緒に小野坂さんの家に行こうと思うんだけどいいよな? 彼氏として挨拶に行かないと」
「それはだめです」
私は首をぶんぶんと大きく横に振った。