怜悧な弁護士は契約妻を一途な愛で奪い取る~甘濡一夜から始まる年の差婚~
私の食べたいものが悠正さんの食べたいものと同じかどうかはわからない。結局は自分の食べたいものよりも悠正さんの食べたそうなものを考えようとしてしまうので、ますますわからなくなって答えがまとまらない。
すると、目の前からすっと伸びてきた手が私の頬に軽く触れる。
「そんな難しい顔するなって。食べたいものを言えばいいだけだろ」
「それが、なかなか決まらなくて」
「それなら、和食、洋食、中華。この中だとどれ?」
悠正さんが人差し指、中指、薬指を順番にピンと立たせながら三つの選択肢を私に用意してくれた。
「えっと……」
その中だとどれだろう。昨日とおとといの晩ご飯のメニューを思い出しながら、そういえば最近食べていないものを答えることにした。
「和食です」
「和食か」
私の答えを聞いた悠正さんが考える素振りを見せたあと、再び提案してくる。
「寿司はどう? 回ってないところ」
「回ってない?」
回転寿司ではなく、目の前で握ってくれるお寿司屋さんのことだろうか。
「そういうお店には行ったことがないです」
そもそも回るお寿司屋さんにもあまり行ったことがないのだけれど。