それは夕立とともに
 栞里ちゃんはキュッと眉根を寄せて、唇を震わせた。

「な、何でって……っ。と、通りかかったから」

 それ以降俯いて喋らない彼女に、俺は追い討ちをかけた。

「ねぇ、知ってる? この電話ボックスに何かジンクスがあるんだって」

「……へぇ」

「クラスの女子から聞いたんだけどさ。好きな人と両思いになれるっていう恋愛のジンクスらしいよ?」

「そー、なんだ。初めて聞いた……若い子は、そういうの好きそうだよね」

 彼女は俯きがちに無難な回答を述べるのだが、それ以降は口を噤みまた喋らなくなった。

 風に煽られて降り注ぐ雨音がいっそう強くなる。

 同じ高校に通う女子の大半が、このジンクスを知っていたのだ。卒業生である栞里ちゃんが知らないとは思えない。

 肺に溜め込んだ憂鬱を全て吐き出すように、深い深いため息をついた。

「……栞里ちゃんってさ」

「え、」

「前から思ってたんだけど、あんまり俺と喋りたがらないよね」

「……」

「カテキョの時間以外はほとんど俯いてるし、あんまり目も合わせてくれないし。なんて言うか、俺嫌われてんのかなって……地味に傷付く時がある」

 それは今も続いている。
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