京都、嵐山旅館の若旦那は記憶喪失彼女を溺愛したい。
☆☆☆

意識が引き上げられると途端に頭が痛くなり、全身に気だるさが襲ってきた。


どうせならこのままずっと眠っていたかったけれど、どうやらそういうわけにはいかなさそうだ。


重たいまぶたを押し上げると急速に意識は覚醒していく。


見知らぬ白い天井が見えて、続いて丸い電気の傘が見えた。


ここがどこなのか疑問を抱くより先にオシャレな電気だなぁと感じたのが第一印象だった。


「気分はいかがですか？」


低く澄んだキレイな声色にそう言われて、瞬きをして首を捻る。


そこにいたのは見知らぬ男性だった。


藍色の着物がひどくよく似合っていて、シャープな顔立ちはテレビの中から抜け出してきたアイドル並に整っている。


その人の上半身しか見えないから、私はベッドに寝かされているんだろう。


男性は床に立て膝をついているようだ。


「熱はないようですが……」


男性は心配そうに良い、私の額にヒヤリと冷たい手を乗せて熱を確認する。


その冷たさが心地よくてうっとりと目を閉じた。


あぁ、気持ちいい。


でもこの人は誰だろう？


私はこんなかっこいい人見たこともないし、まだ夢の中にいるんだろうか。


目を閉じると再び意識はぼんやりしてくる。


このままもう１度眠ってしまいそうな心地よさを感じたとき、「少しお話を聞きたいのですが」と、遠慮がちが声が聞こえてきて目を開けた。
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