恋する乙女の下着事情
<写真スタジオ・リノアの放水事件・その6>

「はい、OKです。
お疲れさまでした」
カメラマンが終了の合図をした。

アシスタントたちがどんどん片づけをしていく。
会社関係の数人と高屋敷が、パソコンで画像チェックを始めた。

みな、忙しそうで、
リノアに声をかける人はいない。
ゴミのビニール袋を手に、リノアは帰っていいものか、
どうしようか迷っていた。

すると、
高屋敷が靴音を立てて、リノアの方にきた。
お怒りは・・・・
まだ継続中のように見える。

「それ、貸して・・!」
リノアは、
おずおずとビニール袋を差し出した。

高屋敷の口調は厳しく、詰め寄る迫力があった。
「名前は?!」

リノアは身を小さくするように
小声で答えた。
「栗原・・リノアです・・」

「あそこの保育園の人?」
「はい・・そうです」
「それでは・・・」

おもむろに、
高屋敷はスーツの内ポケットから
名刺入れを取り出し、
その1枚をリノアに差し出した。

「撮影が遅れたのは君の責任だから、始末書いてください。」

「それから、明日、18時に会社に来てください。
借りたものも返します」
それだけ言うと、
リノアに背をむけて高屋敷は、
画像チェックに戻った。

解放された安心感があり、ようやくリノアは、
もらった名刺を見る事ができた。

名刺には
「コスメティック(株)広報部長 
クリエイティブ ディレクター 
高屋敷 純」

広報部長って・・
やっぱりえらい人なんだ・・・
リノアは一礼をして、
そっと部屋から出て行った。

やってしまった・・・
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