10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 出勤するために病院長室まで病院の廊下を歩いていると、声をかけられた。

「果歩ちゃん」
「ひゃっ……!」

 振り向いたら島原先生。驚いて転げそうになった。

「ご、ごめん。驚かせた?」
「いえ……」
「果歩ちゃん、あの。……っ!」

 何かを言おうとした島原先生に少し驚いた顔をされて、次は赤い顔をされて目をそらされる。

「ふぇ?」
「ごめん。昨日のこと、謝りたくて。本当にごめん」

 島原先生は私から目をそらしたまま言った。

「い、いえ……」

 何に謝っているのかよくわからないけど、大和先生のせいで私も島原先生をまっすぐ見られない。
 そう思っていると、島原先生は、じゃあまたね、と言って足早に歩いて行ってしまった。
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