10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 食事が終わって、先生がソファで仕事の資料を読みはじめる。
 私は邪魔しないようにそっとコーヒーを淹れて、先生の様子を眺めていた。

 さっきふいに身体を見てしまったけど、やっぱり先生って男の人らしく身体もがっしりしてるよね……。
 特別な運動をしているわけじゃないけど、手術中はずっと立っているし、腕も使うし、運動しなくても自然にそうなるのかもしれない。

 それに整った顔立ちに、長いまつ毛……。まつ毛なんて資料を読んでいる時、頬につきそうだ。
 資料をめくる長い指を見て、どきりとする。

(触れたいなぁ、触れられたい……)

 じっと先生を見ながらそんなことを考えていると、数十分後、顔を上げた先生と目が合った。
 私は慌てて目を反らせる。

「少し休憩しようかな。コーヒー、淹れてもらってもいい?」
「はい! 喜んで!」
「居酒屋みたいだね」

 私が慌てて返事をしたら、先生がくすくすと笑う。
 顔が赤くなるのを感じながら、私はコーヒーを淹れて、先生のところに持って行った。
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