10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

「……す、すごい! だれ⁉」

 思わず自分でもそう言ってしまうほどの仕上がりだった。
 麻子さんは嬉しそうに「ほんとかわいい!」と、私に飛びつく。


 そうした私たちを見て笑いながら、正真さんが裏からハンガーにかけられた服をたくさん持ってきた。

「服は、この前雑誌の撮影で残ったのあるけど、どうかな。よければ持って帰って」
「ざ、雑誌って……?」
「MAKEって雑誌知ってる? 俺、あれの専属スタイリストもやってるんだ」
「し、知ってます!」

 思わず叫ぶ。ファッション誌に疎い私でも知ってるような雑誌だ。これが業界人と言うやつか……。
 確かに正真さんの雰囲気は洗練されている。正真さんは笑うと、一着のワンピースを取り出した。

「あはは、かわいいなぁ。これとかどう?」
「す、スカート丈短すぎないですか?」

 普段は膝が見えないくらいの丈のものを履くことが多い。
 しかしこれは、ひざがしっかり見えてしまうくらいの丈なのだ。

 それにすっごくデザインもかわいくて、色も明るい。

(こんなの私に似合うだろうか……?)

 そんなことを思って迷っていると、正真さんは言う。

「これでその旦那さんもイチコロだと思うよ」
「じゃ、じゃぁ……着ます!」

 私が潔く決断すると、正真さんと麻子さんも楽しそうに笑っていた。
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