10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 スタイリングやメイクをしてもらって、服を着替えて街に出ると、変なことに気づいた。

「なんか、見られてます? 麻子さん美人だから」
「果歩ちゃんよ!」
「な、なんで!」

 意味が分からない、と呟くと、麻子さんに、それはこっちのセリフ、と怒られる。
 でも、私はそんな麻子さんと一緒に買い物ができるのが嬉しくて仕方なかった。

 そのあと遅めの昼を食べて、また二人で店を回って……気づいたときには、もう夕方に差し掛かっていた。

 たくさん歩いて疲れた私たちはコーヒーショップに入る。

「さっきの人、お知り合いですか?」

 椅子に座ると私は麻子さんに聞く。
 先ほど、知り合いのように男性に話しかけられた。しかも、それで5組目。

「まさか。ただのナンパよ。果歩ちゃん、ナンパされてあんなに戸惑ってたら、ホテル連れ込まれるわよ。きっぱり断って。これから増えると思うし」
「え?」

 ナンパって何ですか? と聞くと、そこから! と麻子さんは叫んで、ナンパについて詳しく教えてくれた。そして、大和先生には言わないこと、と釘を刺される。

「麻子さん、モテるんですよねぇ……私こんな体験したことないです」

 ナンパの意味を知り、そう呟いて、私はコーヒーをすする。

 麻子さんは苦笑すると、
「うん。とにかく果歩ちゃん、電車で帰せないことはわかった」と唸った。
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