10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~

 その時、私のスマホが震える。

「あ、電話。大和先生だ……」

 私が麻子さんを見ると、麻子さんは早く出なよ、と苦笑する。
 店の出入り口を出て電話に出ると、先生が開口一番、

『今どこ?』
と聞いた。

「あ、あの、駅前のカフェでコーヒー飲んでます」
『そこでそのまま待ってて。行くから』
「……あ、あの?」

 話そうとしたらすぐに電話は切られた。
 私は意味が分からず首を傾げる。

 席に戻ると麻子さんは、大和先生なんて? と聞いた。

「迎えに来るって」
「それは、ちょうどよかったわ」

 麻子さんはそう言って笑う。「それにしても夜勤日勤明けにお迎えとは……よっぽど果歩ちゃんのこと、かわいいのね」

 そう言えば、先生は夜勤からそのまま日勤だったはずだ。今はそれが終わる時間。

 私は私でそれを聞いてむくれていた。
 先生は、やっぱり私のこと、子どもみたいに思っているんだろうか。だから最後までしてくれないんだろうか。
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