10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
「果歩ちゃんは、いやに不機嫌ね?」
「大和先生は、私のこと、子どもみたいに思ってるだけなんでしょうか……」
「まさか。そんなことないわよ! 大和先生が果歩ちゃん見てるとき、嫌になるくらいギラついた男の目してる」
「そんなの……嘘です」
私はつぶやいて泣きそうになる。
すると麻子さんは優しい声で、どうしたの? と聞いた。
「大和先生……まだ最後までしてくれないんです」
私が思わずつぶやくと、
「最後までって……え! まだセックスしてないの!」
麻子さんが叫んで立ち上がる。その声の大きさに私は慌てた。
「麻子さん、しー!」
「いや、ごめん……。ただただ驚いて……」
麻子さんは深呼吸すると、静かにまた座る。
「なんで……」
「最初は痛いからって」
「まぁ、最初は痛いだろうけど」
そうはっきり言われて、やっぱり痛いんだ、と思った。でも、私はそれを受け入れる覚悟だってできてる。
「どうしてなんでしょう」
私が首を傾げると、麻子さんは息を吐いた。
「触られたりは、してる?」
「は、はい……一か月くらいほぼ毎日……」
「毎日」
麻子さんは気の毒そうな瞳を私に向けた後、
「どれだけ慣らしてからするつもりだよ、あのムッツリ……」
と呟いていた。