10秒先の狂恋 ~堅物脳外科医と偽りの新婚生活~
 島原先生が困ったように笑って、私の涙を指で拭った時。

「なにしてるんだ」

 聞きなれた声に、身体をビクリと震わせると、大和先生がそこにいた。私は慌てて顔を逸らす。


「あ、大和。やっと来たんだ」

 やっと来た、とはどういうことだ、と思ったけど、

「病院長の呼び出し4時だろ」
「うん。だけど、ちょっと早く着いたからね。来週の病院長のスケジュール抑えてもらって、果歩ちゃんと少し話してた」

 島原先生が笑って言う。その言葉に私は島原先生の方をちらりと向いた。

(島原先生、大和先生が来ること知ってたんだ。まさか、さっきの話、大和先生にはしないよね……?)
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