花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「連れていけ」と刺客の男が命じたことで、オレリアの近くにいたひとりが剣を鞘に収めて、エミリーのそばへ駆け寄ってくる。
「いくぞ」と呟いて首根っこを掴もうとするが、触れるよりも先にエミリーに睨みつけられ、空気感に圧倒されるように慌てて手を引っ込めた。
他の男から「こっちだ」と声をかけられ、胸を張ってゆっくりと歩き出したエミリーへとオレリアは一歩踏み出す。
「エミリー。どうか忘れないでおくれ。仲間がたくさんいることを」
その言葉に力強く頷いて、エミリーはオレリア邸を後にした。
オレリアの屋敷の傍の裏路地に停まっていた幌馬車の荷台へと、エミリーは手荒に放り込まれ、それはすぐに動き出す。
荷台には刺客の男とふたりっきりで、御者と馬で並走している者が数人いるだけ。どうやら後の者は先にモースリーへ向かったようだった。
わずかなパンを出されても怖くて手をつけず、休憩として立ち寄った森の川の水を飲んで空腹を癒す。
うとうとしてしまうことはあっても出来る限り警戒は緩めず、オレリアたちやレオンのことを思い浮かべながら挫けそうな心を奮い立たせているうちに二日が経過し、やがて知っている町の景色が視界に飛び込んできた。