花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

やっとレオンのいるモースリーに到着したが、懐かしさを覚えるよりも先にエミリーは唖然としていた。

ここが本当に自分の知っているモースリーの街並みかと思うほどひと気がなく、行き交うのは凶暴化した獣ばかり。

ふわりと甘い香りが鼻腔を掠め、大聖樹の毒がここまで届いているだなんてとエミリーは戸惑いを隠せない。

想像していたよりも悪い状況に、早く大聖樹を回復させなくては手遅れになってしまうかもと怖くなる。

幌馬車はお城に向かってどんどん進んでいく。

叶わないだろうとわかりながらも、このまま裏庭へ連れて行ってくれないかしらと心の中で願っていると、突然幌馬車が急停止した。

「なんだ!」と刺客の男が苛立った声をあげると、御者台の方から「凶暴化した獣犬に取り囲まれました」と怯えた返事が聞こえてくる。

刺客の男は「チッ」と舌打ちして、「逃げようなんて思うなよ」とエミリーに念押しした後、馬車の外へと出て行った。

エミリーも外へ目を向け、ヒヤリとする。

見える範囲でも涎を垂れ流して唸りを上げる獣犬の姿が五、六匹ほどいる。男たちが獣犬を追い払おうとするが、なかなか上手くいかない。

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