花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!

もちろん刺客の男の言うことなど聞いてやる義理はない。逃げるなら男たちの意識が獣犬に向けられている今だ。

今いるのはマルシェが行われている広場。

子供の足では一気に遠くまでいけないため、所々残されていう売り場台の陰に身を隠しつつ、レオンがいると期待してモースリー城へと向かおう。

エミリーは決意し、男たちが獣犬に集中しているのを今一度確認してから、幌馬車からなんとか降りた。

そのまま一番近くにある空の売り場台に向かって駆け出そうとした時、「きゃー!」と悲鳴が上がった。

自分と同じくらいの子供とその母親が道端に倒れ、ふたりを三匹の真っ白な獣犬が取り囲む。

母親は子供を自分の元へ引き寄せ、青ざめた顔で獣犬を見つめる。

その時、エトリックスクールの制服を身に着けたひとりの女性が、親子の前へ果敢に飛び込んでいった。

「あっちに行きなさい」と杖状の魔導具を手に獣犬と向き合ったリタの姿にエミリーは息をのみ、自然と足が親友に向かって進み出す。

獣犬たちが一斉にリタへと飛びかかった。

エミリーは「リタ!」と大声で叫び、右手を思い切り前へと伸ばす。

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