花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
外では剣と剣がぶつかる音も聞こえてくるが、馬車は騎士団員たちを振り切るように速度を上げた。
「くそっ! 勝手な行動を取りやがって」
男はエミリーの胸ぐらを掴みあげ、怒りと共に荷台の床板へと叩き落とす。
打ち付けた腕の痛みにエミリーは歯を食いしばり、男を睨みつけた。
幌馬車は勢いを弱めずにロレッタの屋敷の庭へと入っていく。
停まったのを感じると同時にエミリーは再び男に掴み上げられ、宙ぶらりんの体勢のまま馬車から降ろされる。
そして今度は地面へと乱暴に投げ捨てられた。
「仮にあの場で私たちを欺くことができていても、弓矢に塗ったのは猛毒。どの道死は免れないのではとも思っていたけど、本当にしぶとい娘ね。忌々しい」
歩み寄ってくる足音と共に声が近づいてくる。
痛みを堪えながら顔を上げたエミリーの視界に怒りで満ち溢れるロレッタの姿が映り込んだ。
このままでは殺される。本能で身の危険を感じ取るが、抗う方法が見つからない。
ロレッタに立ち向かえる力が欲しいとエミリーは強く願った。
「あなたに生きていてもらっては困るのよ。大聖樹を回復させられなければ、権威を保つのが難しくなりますからね」