花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
ロレッタの淡々とした声が響く中、エミリーはゆっくりと上半身を起こす。
右手を地面へ付き、荒い呼吸を繰り返しながら砂を掴むようにぎゅっと拳を握りしめた。
「苦しそうですね。まだ完全に毒が抜けきっていないのでは? それなら今すぐ楽にして差し上げた方がよろしいかと」
ロレッタの傍らに立って冷たい顔でエミリーを見下ろしていた騎士団長が、さも当然といった様子で口を挟んだ。
ロレッタに目配せされた刺客の男が顔を伏せた状態のエミリーの横へと進み出て、剣に手をかけた。
しかし、視線の先で起こったエミリーの体の変化に目を見張り、戸惑うように後退りをする。
エミリーはワンピースの丈を調整するために止めていたボタンやベルトを外し、深呼吸する。
「権威? 笑っちゃうわ。幼い子供たちに戦いを強制させてまで自分の地位を守りたいだなんて恥ずかしくないの?」
声にはもう幼さは残っていなく、視線をあげて見せた顔もロレッタも知っている十六歳のそれ。
大人の体に戻ったエミリーはゆっくりと立ち上がり、ロレッタと見つめ合う。
「恐怖で怯える人々や活気のなくなった街を見て何とも思わないの? この状況を招いたのはあなたよ」
「違う、私じゃない。お前だ。お前が死ねば全てうまくいっていた」