花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「今城には俺の家族もいるが、裏庭には聖女院の院長がいるはずだ」
エミリーはなるほどと納得する。
裏で手を引いているのはもちろんロレッタだろうが、あの男たちを使って自分を攫わせたのが国王夫妻や兄王子であるよりも、カルバード学長の方がしっくり来る。
早く立ち去ってくれないかしらと様子をうかがっていたエミリーはレオンに素早く引き寄せられ、再び物陰へと身を潜めた。
ロレッタの屋敷の方向から息も絶え絶えにやってきた騎士団員がエミリーたちのすぐそばを通り、男たちの前で立ち止まる。
「あの女と王子が逃げ出した。探して殺せ。報酬はその倍だ」
聞こえた言葉と、男たちの歓喜の雄叫びにエミリーは身を震わせる。
それぞれに歩き出した男たちのうちのひとりがこちらに近づいてくる気配を察知し、エミリーはレオンへ身を寄せる。
レオンも左手でエミリーをしっかり抱き寄せ、右手を剣の柄に添えた。
すぐそばで足音が止まった。
見つかるのを覚悟したその瞬間、獣犬の遠吠えが響き渡り、狭い路地の向こうから数匹の犬たちが一心不乱に駆けてくる。
その様子に、男は「獣犬だ」と呟き慌てて引き返していった。