花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「気持ちは痛いほどわかるが、今はそれどころじゃない。早く大聖樹の元へ」
テド院長は「軽く抱きしめるのも許されないのか」と苦笑いしてから、先導するように裏庭へと足を踏み入れた。
レオンに手を引かれながらエミリーも門扉をくぐり抜けて、ケホッと咳き込む。
慌ててテド院長が振り返り、申し訳なさそうな顔をした。
「待っている間にエミリーのぶんを用意しておくべきだった。すまない」
そう言ってテド院長は自分の口を覆い隠している布に触れた。
城に入ったところから多少の喉の痛みを感じてはいたが、裏庭に入った途端瘴気が格段に濃くなった。
しかも、緑豊かだった林が所々枯れ、銅像に胞子も付いている。
大聖樹が放っている毒のせいだろうと判断すれば、この先はどうなっているのかと怖くなる。
「俺のだが、無いよりはマシだ」とレオンはポケットから取り出した覆い布をエミリーに付けようとするが、エミリーはその手をそっと押し返す。
「大丈夫よ、レオン様がつけて。私は自分で回復できるし、それにすぐに大聖樹を回復させるから」
エミリーの言葉にテド院長は「頼もしいね」と嬉しそうに呟き、大聖樹がある開けた場所の少し手前で歩みを止めた。