花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
「あなたの名前を騙っていた彼は、モースリーアカデミーの学生だって言っていたけど、それは本当? 実はあなたと同じ騎士団員だったなんてことはない?」
「学生であるのは事実です。でもよく騎士団員と一緒にいますけど。さっきも城内を団員と並んで歩いているのを見かけましたよ」
「本当に!?」
つい大きな声をあげてしまい、エミリーは口元を手で押さえた。
列を離れているのを教師たちにはまだ気付かれていないが、リタやケビンなどクラスメイト数人はどうしたのかとエミリーをちらちらと振り返り見ている。
「戻った方が良さそうですね。予定ではもうすぐ大聖女様と王立薬師院院長がお目見えになりますし」
「……そ、そうよね。戻るわ」
そうは言っても、大聖女の話よりも彼の話を聞きたいのにという歯痒さから、なかなか足が進まない。
「あ、そうだわ。彼に伝えておいて、早く町を案内してって」
「わかりました。必ず伝えます」
エミリーは名残惜しさを振り切るように本物のフィデルに背を向ける。
これできっと近いうちに彼が会いに来てくれるはずと期待を膨らませ、エミリーはリタの隣へと急ぎ足で舞い戻った。