花嫁も大聖女も、謹んでお断り申し上げます!
聖女遷移とは言葉の通り、聖樹を管理する聖女が代わることである。
他の聖樹でも起こることだが、大聖樹ともなるとトップに君臨する大聖女の跡を引き継ぐことでもあるため国中から注目を集める。
続けてテド院長が面倒そうに前に出て自己紹介し、長期休暇の研修に関してひと言ふた言説明し早々に話を終えた。
「さぁ皆さん、大聖樹へ案内しましょう」とロレッタ自ら先頭を切って歩き出す。
テド院長に、ビゼンテ先生とマリアン先生が続くと、聖女クラスの生徒たちを追うように薬師クラスも再び移動が始まる。
やがて最後尾にいるエミリーもリタと共に歩き出したが、その途中肩越しに振り返り、そのまま室内をぐるりと見回した。
本物のフィデルの姿はもうどこにもなく、聖樹よりも彼について行きたかったとため息が出た。
国王やロレッタが出入りしていた奥側の扉から廊下へ出ようとした時、エミリーの隣にケビンが並んだ。
「さっき騎士団員と話していたようだけど知り合い? 町を案内してとか言っていたのが聞こえたけど」
「彼とは知り合いで、つい話しかけちゃった」
「そっか。あのさ、俺、モースリー出身なんだ。騎士団は忙しいだろうし、俺でも案内くらいできるから、良かったら言ってくれ」
「ケビンって、モースリー出身だったの? それなら……」