幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
 ひどいよ。璃音。

 わたしのなかに自分の存在をこれでもかというほど刻みつけておいて、突然、煙のように跡形もなく消えてしまうなんて。

 いちばん大切な存在だって自覚したとたん、いなくなっちゃうなんて。

 こんなふうに突然いなくなるなら、初めからここに来たりしないで欲しかった。

 いや……

 璃音は、今までの自分を超えるきっかけを掴むために、仕事のために、わたしのところに来たんだ。
 そしてわたしも、そんな璃音を応援したくて、ここにいても良いと承諾した。

 好きになってしまったのは、わたしひとりの問題。
 璃音に恨み言を言うのは、間違ってる。

 でも、会いたいよ。
 声が聞きたいよ。
 また、前みたいに「ちさ姉」って呼んでほしいよ。

 好きという気持ちを受け止めて欲しいなんて言わないから。

 ただの幼なじみのままでいいから。

 もう一度、そばに来て。
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