幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
 アリサは、さっき叩いたおれの頬に触れてくる。
 冷たい手だ。

「痛かった?」
「いや、あのぐらい本気でやってくれたほうが演技しやすいから」

 おれがそう返すと、アリサは婉然と微笑んだ。
 長い髪を掻きあげ、意味ありげな視線を投げかける。

 普通の男なら、“世界でもっとも美しい100人”に選ばれた日本一の美女、仲村アリサにこんなことされたら、コロッといくんだろうな。

 でも、おれの心はアリサの手と同じぐらい冷めている。
 たとえ絶世の美女だろうが、ちさ姉の代わりにはならない。

 はーっ。
 あれからずっと、自分に言い聞かせてはいる。

 もういくら想っても、ちさ姉はおれのものにならないって。


 だって、あんなに好きだった片思いの相手と気持ちが通じ合ったんだぜ。 

 おれの入る隙なんて、あるはずがない。
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