幼なじみはトップアイドル 〜ちさ姉を好きになっていいのは俺だけ〜
「ちさ姉」
「何?」
「ありがとな。おれのワガママを聞いて、ここに置いてくれて」

 いつになく素直な璃音。
 目の前にあるのは、非の打ち所がない端正な顔。
 コップを手に取り、もう冷めてしまったお茶を飲みほそうと、わずかに開いた唇。

 飲みこむたびに上下する喉仏が、なぜかやたらと目を引く。

 普通の人に比べて、だんぜん華奢な璃音なのに、首は意外に太くて、それはやっぱり男性のもので……

 そのことが意識にのぼった途端、カーッと頭に血が上った。

 な、なに考えてるんだ、わたし。

 その動揺を悟られまいと、ついおどけた口調で答えていた。

「どしたの? そんな急に改まっちゃって」

 わたしの態度に、璃音は不満げな顔で文句をつけた。

「そういう時は素直に『どういたしまして』って言えばいいじゃん」
そう言うと、ふいっと横を向いてしまう。

 こういうとこはあいかわらず子供っぽいんだけど。

 さっきは、なんだか急に璃音が別人に見えた……

 そう思ったら、心臓がきゅっと締めつけられて、息が詰まってきて……

 はじめて、幼なじみじゃない、璃音の違った顔を見せられたような気がした。
 
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