わんこ系男子と甘々な日常


数秒間の静寂が何分もの長さに感じられた。


気まずくなっていよいよ図書室から逃げ出そうとしたそのとき。


「蒼空くん落ち込まないで!先輩は思ってないみたいだけど、私は蒼空くんと話してて楽しいし……それに、その、すっごくかっこいいって思ってるからね?」


すかさず蒼空くんの気持ちに寄り添う女の子。


私の評価を落としてから自分の好感度を上げるところが抜かりない。


もじもじしながら言葉を溜めて蒼空くんの嬉しがることを言う女の子はなかなかのやり手なんだろう。


……でも、違う。


私だって蒼空くんのほのぼのした空気にいつの間にか巻き込まれていてすごく楽しいって思っているし、なにかに没頭している蒼空くんは特に誰よりもかっこよく見える。


中学の頃からずっと……


「……私だって思ってるよ」


つい、反論がぽろっと口から零れ落ちた。


慌てて口を抑えてみたけど、蒼空くんを挟んで向こう側にいる彼女には聞こえなかったらしく、媚びる笑顔が尖ることはない。


良かった……と、密かに胸を撫で下ろしたとき、


「っ、奈子先輩〜!!」

「え、なっ……?!」


私の視界が遮られ、女の子が見えなくなった。


蒼空くんが私を大きな身体で包み込んだから。


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