彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
「ごめんなさい。今のは八つ当たりです」


とても小さな声で謝罪する。


どうにか息を吹き返した花たちが、水を滴らせながら心配そうにこちらを見ている。


「でも、佳太くんってすごく人気者なんですよね?」


名前で呼んでみると、彼はビックリしたように息を飲んで私を見た。


その表情はわからないけれど、きっと目を見開いているのだろうと想像できた。


「どうして、名前……」


「クラスの女子が言っていました。佳太くんに近づくなとも」


「そんなこと……だから花壇に来なかったのか?」


その質問には答えなかった。


だけど、答えないことが肯定を意味することになってしまった。


「そんなことを言われたなんて知らなくて、ごめん」


「佳太くんは人気者で、それで誰にでも優しいんですよね?」


私だけじゃない。


私が特別なわけじゃなかった。


手を握ってくれたときのトキメキとか、頭をなでてくれたときのぬくもりを思い出して涙で視界が滲んでいく。
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