彼の顔が見えなくても、この愛は変わらない
続けざまに謝られて私は言葉を切った。


佳太くんはずっと頭をさげたままあげようとしない。


その姿がなんだか痛々しくて「大丈夫だよ先生」と、声をかけた。


『先生』と呼んだのは自分なのに、また胸にかすかな痛みを感じた。


先生と生徒だと自分自身にわからせるためにやったことだけれど、こんなにチクチクするとは思わなかった。


「私は先生がちゃんと先生になれたらそれでいいから。そのお手伝いができるなら、A組にだって行くから」


そう言うとなぜか佳太くんは悲しそうな雰囲気でため息を吐き出した。


「俺のせいでそんな風に思ったんだよな。俺、最低だ……」


うなだれて、握りしめている手の力も抜けていく。


「どうしたの?」


慌てて聞くと、佳太くんは唇を引き結んで勢いよく顔を上げた。


「俺、昨日で教育実習は終わったんだ。だから今日はただの男としてここに来た」


その言葉に私はまばたきを繰り返す。


同時に昨日で教育実習は終わったという話にホッと胸をなでおろした。


家の外で大きな声で生徒を呼んでいたなんてバレたら、きっとひとたまりもないだろうから。
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